福岡高等裁判所 昭和29年(う)176号・昭29年(う)175号 判決
なお職権を以て按ずるに原判決は、被告人が判示のごとく登記官吏をして商業登記簿原本に不実の記載をなさしめた罪にかかる文書として、刑法第一九条に則り、偽造の登記簿の記載を沒収する旨の言渡をなしているところ、公務員に対し虚偽の申立をなし、公正証書原本に不実の記載を為さしめた場合においては該公正証書自体は情を知らない公務員がその権限に基いて、正当に作成したものであつて、偽造にかかる文書ではなく、ただその内容に関する犯人の申立が虚偽であるというに過ぎないから、刑法第一条各号のいずれにも該当しないものとして、これを沒収し得ないものと解すべきである故、原判決が前示登記簿の記載について沒収の言渡をなしたのは法令の適用を誤つた失当があり、右の誤りは、判決に影響を及ぼすこと勿論であるので、原判決はこの点においても破棄を免れない。
(後略)